ナルシス
「パパもママも、自分のことばっかり。私のことなんか、どうでもいいの。そんなに邪魔なら、子供なんか産まなければ良かったのに。そうすれば私。」

と言って、夕璃の大きな目から、また涙が溢れた。

朗はもう一度、夕璃の頭を抱く。
 


「俺はユーリがいて、嬉しいけどね。」

夕璃の言う通りだ。

兄も義姉も自分の寂しさに夢中で、夕璃の寂しさを救えない。
 


「ずっと一人ぼっちで、この家にいる気持ち、わかる?一年生のころからずっと。雨の音も風の音も怖くて。テレビを大きくして。ぬいぐるみ並べて。でも、一人は一人なんだよ。」

朗の胸で、しゃくり上げながら夕璃は言う。
 

「偉かったよ、ユーリは。そんなに寂しいのに我慢して。こんなにいい子に育って。」

今夜は夕璃を泣かせてあげよう。

夕璃がもっと泣けるような言葉を朗が言うと、夕璃はまた声を上げて泣き出した。

それでいい。もっと泣いて。

たまには心を吐き出して。
 
 
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