ナルシス
深夜、キッチンで徹と顔を合わせると、徹は寂しそうに笑う。
 
「ユーリ、夜更かしだね。」

と気怠気に言って。


夕璃は徹の脇をすり抜ける。
 
「うん。おやすみ。」

と小さく言って。階段へ向かう。


徹の視線を背中に感じて夕璃が振り返ると、徹は寂し気に小さく片手を上げた。
 


夕璃は衝動的に向きを変え、徹に正面から抱き付く。

一瞬戸惑った徹は、静かに夕璃の背中を抱いた。



何故、そんなことをしたのか夕璃にもわからない。

でも朗の前で泣いてから、夕璃の心は少しずつ、こぼれはじめていた。

寂しいことを伝えていい。

我慢しなくてもいい。

夕璃はまだ子供なのだから。
 

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