ナルシス
でも夕璃を産んだ後、徹は以前のように光子に夢中にならなかった。

ぎりぎりまで光子を待たせ義務のように抱く。

以前のような情熱も歓びも感じられなくて。

光子は自信を失っていく。
 



それ以外の徹は同じように優しかった。

夕璃を溺愛し光子を労わってくれた。


光子と夕璃の何不自由ない生活。

贅沢で優雅で人が羨むような。


その生活を守っているのは徹だから。

だから光子は目を背け続けた。
 


もう少し夕璃が大きくなれば。

今は夕璃の育児で大変だから。


夕璃を良い子に育てれば徹も認めてくれる。

もう一度、あの頃のように求めてくれる。



責任感の強い光子は、夕璃の育児にのめり込んでいく。
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