ナルシス
13
校門前に止めた車に向かって夕璃は走ってくる。
徹が車から降りると『パパー』と言って手を振って。
まだ華奢な体は身長も光子より低い。
長い髪が風になびくと額が出て、夕璃をより幼く見せる。
「そんなに走らなくても大丈夫だよ。」
後部座席のドアを開けてあげる徹。
「だって。駐車禁止だから。」
と車に乗って夕璃は言う。
助手席の光子が振り向いて
「おかえり、ユーリ。」
と言うと、
夕璃も嬉しそうに『ただいま』と言った。
「ねえママ。ずっと考えていたんだけど、やっぱり洋服が欲しいな。どこで買い物するの。それによって変わるけど。」
早口に喋る夕璃に、徹と光子は苦笑する。
「ユーリ、絶対授業聞いていなかったよ、今日は。」
光子の言葉を無視して、
「ねえパパ。どこで食事するの。せっかくだから制服じゃいやだな。買った洋服に着替えてもいいけど。靴とか鞄が合わないし。」
と徹に言う夕璃。前のめりに腰かけて運転席と助手席の間から顔を出して。
「上から下まで全部買って着替えなさい。好きなように。」
徹が笑いながら言うと、
「さすがパパ。」
と徹の肩を叩く。
こんな風に、ずっと甘やかしたかった。
我儘になると叱られても。
夕璃の願いは全部叶えようと思っていた。
それなのに甘える機会さえ与えられなかった。
徹が車から降りると『パパー』と言って手を振って。
まだ華奢な体は身長も光子より低い。
長い髪が風になびくと額が出て、夕璃をより幼く見せる。
「そんなに走らなくても大丈夫だよ。」
後部座席のドアを開けてあげる徹。
「だって。駐車禁止だから。」
と車に乗って夕璃は言う。
助手席の光子が振り向いて
「おかえり、ユーリ。」
と言うと、
夕璃も嬉しそうに『ただいま』と言った。
「ねえママ。ずっと考えていたんだけど、やっぱり洋服が欲しいな。どこで買い物するの。それによって変わるけど。」
早口に喋る夕璃に、徹と光子は苦笑する。
「ユーリ、絶対授業聞いていなかったよ、今日は。」
光子の言葉を無視して、
「ねえパパ。どこで食事するの。せっかくだから制服じゃいやだな。買った洋服に着替えてもいいけど。靴とか鞄が合わないし。」
と徹に言う夕璃。前のめりに腰かけて運転席と助手席の間から顔を出して。
「上から下まで全部買って着替えなさい。好きなように。」
徹が笑いながら言うと、
「さすがパパ。」
と徹の肩を叩く。
こんな風に、ずっと甘やかしたかった。
我儘になると叱られても。
夕璃の願いは全部叶えようと思っていた。
それなのに甘える機会さえ与えられなかった。