ナルシス
「ママはアクセサリーが欲しいな。ペンダントかピアス。」

夕璃に合せていう光子。含むような笑顔で。
 
「もう。ママまで。何でも買いなさい。ティファニーでもカルティエでも。」

自棄のように言う徹に、ピースサインを出す光子。


「えー。ティファニーいいな。ユーリも欲しい。」


小さな頃のように自分を“ユーリ”と呼んだことに、夕璃は気付かない。

でも徹と光子は気付いていた。


家族の前ではずっと自分を“ユーリ”と呼んでいた。

いつからか私と言うようになり話すことさえ減っていた。

『ユーリ、ごめんね』徹も光子も心で言っていた。
 
 
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