ナルシス
出産を終えた光子から求める視線を感じたとき、徹は自分の体に違和感を覚えた。
あの頃のように光子を満たすことが億劫になっていた。
自分だけなら、もっと簡単だから。そうすることに慣れてしまったから。
夕璃が幼稚園に入る頃から、仕事は順調に伸びていた。
店舗の数が増え、徹はすべての店舗を管理する。
家に帰る時間は、どんどん遅くなっていく。
それでも夕璃が可愛くて。
明け方帰って仮眠を取り、幼稚園に行く夕璃を見送る。
夕璃の時間に合せて生活している光子とは、完全にすれ違ってしまう。
それを言い訳にして徹は光子に触れなくなっていった。
輝くように美しい光子から憂いを感じるようになったのは、その頃だった。
光子が不安に思っていることには気付いていた。
少し待っていてほしい。
今は仕事が忙しいから。
一段落したら、また深く愛するから。
それから10年。徹は見ない振りをした。
あの頃のように光子を満たすことが億劫になっていた。
自分だけなら、もっと簡単だから。そうすることに慣れてしまったから。
夕璃が幼稚園に入る頃から、仕事は順調に伸びていた。
店舗の数が増え、徹はすべての店舗を管理する。
家に帰る時間は、どんどん遅くなっていく。
それでも夕璃が可愛くて。
明け方帰って仮眠を取り、幼稚園に行く夕璃を見送る。
夕璃の時間に合せて生活している光子とは、完全にすれ違ってしまう。
それを言い訳にして徹は光子に触れなくなっていった。
輝くように美しい光子から憂いを感じるようになったのは、その頃だった。
光子が不安に思っていることには気付いていた。
少し待っていてほしい。
今は仕事が忙しいから。
一段落したら、また深く愛するから。
それから10年。徹は見ない振りをした。