ナルシス
「その絵、ナルシスっていうの?」

夕璃と一緒に立ち止まって徹が聞く。
 
「知らない。ユーリがそう呼んでいるの。」


誰もいない家に帰る夕璃は、絵の少年に声をかけていたのか。

自分で名前をつけて。

徹の心を切なさと、すまなさが溢れる。



光子を見ると硬い表情で何かを考えている。
 
「ねえ、ユーリ。昔、ここでおやつ食べていた?」

不審な目で夕璃に問いかける光子。


ずっと昔、何度もここにお菓子のカスが落ちていたから。

夕璃はいたずらを見られたような恥ずかしそうな顔で頷く。
 


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