ナルシス
夕璃は小さい頃よく徹にキスしてくれた。

幼稚園に行く前、帰った時、眠る前。

徹がいれば必ずキスをしてくれた。



誰もいない家。

キスしてあげる相手がいないから夕璃は絵の少年にキスをした。


夕璃がキスをすると徹が喜んだから。

誰かを喜ばせるために。
 


照れくさそうに徹を見てから、夕璃は絵の方を向く。

徹の腕から伸び上がり少年の頬に唇を当てる。
 


「昔はナルシスがユーリのお兄ちゃんだったの。でも今は弟になっちゃった。」

そっと少年の頬に触れる夕璃。

徹は夕璃の頭を肩に抱き寄せる。涙が流れそうで。

 
< 66 / 90 >

この作品をシェア

pagetop