ナルシス
夕璃はまだ不安だった。

仕事の日数を減らして夕璃との時間を作る母。

休日に家族で出かけようとする父。


夕璃との失った時間を取り戻す為だけに。

これからの毎日がずっとこんなに幸せなのか、まだ信じられなくて。
 

「ユーリと一緒に買い物できるのも、今のうちだからね。」

と徹が言うと夕璃の顔が一瞬曇る。

もしかしてこれから、もっと忙しくなるのかもしれない。
 


「どうして?」夕璃は小さく聞く。
 
「ユーリに恋人ができたら、パパやママと一緒に出掛けてくれないだろう。」

父は拗ねるように言う。

夕璃の曇った表情は、パッと明るくなる。
 
「何だ。パパ、そんなことを心配していたの。大丈夫だよ。ユーリ、恋人なんかできないから。」

買ってきた服を、丁寧に畳みながら夕璃は言う。

少し俯いて。照れくさそうに。
 


「わからないわよ。ユーリはママに似て美人だから。」

と言う光子に
 
「自分で言う?」と言って夕璃は笑う。
 


「ママがパパと結婚したのは、19才の時だからね。ユーリ、今17才だろう。あと2年しかないよ。」

徹の言葉に、
 

「ママ、早熟。ユーリはまだ全然だよ。」と答える。

今はまだ家族と一緒にいたい。

もっと父と母に甘えたい。


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