ナルシス
お留守番はみんなが思うほど、辛いことではなかった。

眠るまでの時間が長いだけ。

上手に時間をつぶせれば。


何かに集中していると時間は早く過ぎる。

テレビやDVD、読書や工作、ゲームなど。

夕璃は上手に過ごせるようになっていく。
 



でもアニメを見ていて、おもしろいシーンに笑った後、振り返っても母はいない。

誰も共感して一緒に笑ってくれない。

そんな時は寂しくて泣きたくなった。
 



中学生になると読書に夢中になった。

図書室から借りてきた本を読み漁る。

読書をしていると時間を忘れられた。とても早く時間が過ぎたから。



それに友達も、だんだん部屋で一人過ごすようになっていた。

みんなと同じだと思っていた。
 


家に親がいて部屋で一人過ごすことと、誰もいない家に一人でいることは、全く違うのに。

夕璃は平気だと思うようにした。

夕璃といる時の母は、いつも優しかったから。

夕璃が大好きな母のままだったから。
 
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