ナルシス
光子に似た美しい顔立ちに成長していく夕璃には、無邪気な輝きは無かった。

寂しさが夕璃を曇らせてしまう。

愛を受けている自信がないから。

どこかが寂しそうだった。



高校生になった夕璃が外で時間をつぶしたのは、当然のことだった。
 
寄り道をしても、ただ友達と過ごすだけ。

街を歩いたり、おしゃべりをしたり。

夕璃と同じように放任されている友達と。

ただ寄り添っていただけ。みんな少しずつ寂しかったから。
 


それなのにこの間、朗に咎められた時、夕璃の心は破裂してしまった。

朗が夕璃を抱きしめたから。忘れていたぬくもりを思い出してしまった。
 
一度思い出してしまったぬくもりは、温かくて懐かしくて。

夕璃に寂しさを自覚させてしまう。

思わず父に抱き付いてしまうほど。

子供のころのように、膝に抱かれたいと思うほどに。
 
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