ナルシス
若くて美人の光子は、徹にとってはお人形だったのかもしれない。

綺麗な服を着せて飾っておく。

連れて歩いて人に見せるための。

光子も承知していたはず。

少なくとも夕璃が小さな頃は、贅沢な閑を楽しんでいた。
 


光子に似た夕璃を着飾らせ、色々な場所に連れ歩いた。

若くて美人の光子が高級品を身にまとい、夕璃の手を引いていると人々は振り返る。
 
「あの人、モデルかな。」
 
「女の子、そっくりだけど。自分の子?」
 
「すごく綺麗。絶対、芸能人だよ。」

光子と歩いていると注目される。

ホテルのロビーやレストラン、デパート。

そんな時光子は優しい微笑みで夕璃を見つめる。

少し得意気な笑顔で。

夕璃は光子のアクセサリーだから。

一生懸命、任務を果たす。光子の笑顔が好きだから。
 

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