トワイライト(下)
仕事道具の一つを持った途端に彼は人が変わったように真剣な面持ちなり、丁寧に髪の毛を乾かしながら櫛を入れて綺麗に整えてくれた。
それを終えた後で軽くキスをして自身の髪の毛を乱暴に乾かし始め、物の数分でドライヤーを片付けてしまう彼に思わず声を掛ける。
「ちゃんと乾かさないと風邪ひくよ?」
同じ台詞を口にすると彼は少し鼻で笑い、チェストの中から細長い箸入れのような箱を持ち出してソファーに腰を掛けた。
そして徐に自分の首元に手を回しながら静かに告げる。
「本当は女の子が告白する日だけど、男からもして良いの知ってる?」
その言葉に顔を上げると、目線が首元を見てと促していた。
戸惑いながら指を這わせて伝わる細い金属のような感触、鎖骨の真ん中に留まる小さな形を辿って一気に感情が込み上げてくる。
かさついた指が頬に触れ、彼は眉尻を下げて優しく告げた。
「まだ付き合って一ヶ月しか経ってないけど、気持ちは変わらないから、これからも俺と一緒に居て欲しい」
頷く以外に何も言い返せず、目の前に滲んで映る首元の金色が更に涙を誘う。
自分の肩を優しく抱き寄せ、背中を静かに撫でながら彼は言った。
「泣かせてばかりでごめん……牛乳温めてくるから待ってて」