トワイライト(下)
キッチンに立つ彼の姿を眺め、流れる涙を払って寝室に向かい、それを手に大きな息を吐いてソファーに戻る。
すると同時に彼がテーブルの上にカップを置き、背もたれに掛けていたシャツに袖を通しながら言った。
「少し熱めにしたから、気をつけて飲んで」
「あり、がと……」
何処からどう見ても不審な様子で落ち着きが無く、横で何か一つ行動を起こす度に鼓動が跳ね上がり、やけに緊張した身体が何処も震えて上手く言葉が出て来ないまま。
それを不思議そうな面持ちで眺めてるのを横目にし、息を整えている間に優しい口調が聞こえてくる。
「寒いんだったら、それ飲んで早く身体温めて」
その言葉に頷きながら傍らの贈り物を手に取り、思い浮かぶままに言葉を綴った。
「これ……良かったら……使って……気に入らないかも、しれないけど……」
男性に贈り物をした経験も無くて渡し方が分からず、小学生の男子みたいに突き出したまま俯く。
「俺に?」
少し怪訝な声に何度も頷いて見せると、彼は恐る恐る手を掛けて包み紙を取りもせずに言った。
「煙草なんて良く買えたね、でも丁度切れてたから助かった」
ふと笑ってカートンを脇に置き、小さい箱の包み紙を丁寧に広げて箱の蓋を開いた瞬間。
彼は目を丸くさせて動きを止め、少し瞬きを繰り返した後で視線を行き来させていた。