トワイライト(下)

耳にした言葉が鋭く聞こえ、言い訳をする自分を彼は冷ややかな目線で捉えていた。

お気に入りにしていたタータンチェックのミニサロペットスカート、ショートパンツより女の子らしい洋服を咎めた彼が少し神妙な面持ちをしながら言葉を口する。


「ごめん……茅紗の気持ち完全に無視して……悩み事なら車で聞くし、言い難いなら何時でも聞くから、着替えたら出て来て」

「分かった……直ぐ行く……ごめんね……」

軽く頷いて彼はリビングを後にし、車中では煙草を吹かして何処か遠くを見つめたまま。

思い詰めたような眼差しが酷く目に焼き付き、問いたい現物を背後に口を結ぶしかなかった。

狭い車内は呼吸を重くさせ、吐き出す度に固唾を飲んでしまう。

言葉を選んで見ても選択肢は無く、彼も黙り込んで車を走らせていた。

職場までの近い道程は五つの信号を越えて角を曲がれば見えてくる。

丁度五つ目の信号の間際で彼が静かに呟く。


「茅紗……俺と別れて欲しい……」


その目は赤の信号を捉えて真っ直ぐを見据えていた。


「な、に言ってるの……?」


嘘だと言って欲しいのに口を開くこともなくハンドルを右に逸らし、従業員入り口の傍まで静かに車が滑り込んで行く。
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