トワイライト(下)
その手で自分の指を柔らかく包み込み、彼は優しくも丁寧に語り掛けてきた。
「俺には全部が可愛く見えて仕方なくて……たまにどうすれば良いか、分からなくなる……だから、言い過ぎる時もあると思う……そんな時は、怒ってくれていいから……」
「じゃぁ……風邪ひくから早くシャツ着て」
そう言った瞬間に大きなクシャミをする彼の手からシャツを奪い取り、腑抜けた顔を眺めながら頭を潜らせて腕に袖を通していく。
子供のような着せ替えに思わず鼻で笑ってしまい、目の前で眺めていた彼が不貞腐れた面持ちをして呟いた。
「直ぐ脱ぐのに」
「……今日は、もう寝ないと……」
乱れた髪の毛を直しながら窘めても彼の口は止まらず問い掛けてくる。
「今日は?明日ならいいの?」
「明日は……明日にならないと、分からないし……」
「じゃぁ、いつならいいの?」
「いつって……言われても……」
止まらない勢いは自分の身体を容易く押し倒し、部屋の照明が落とされて耳元に唇が触れる。
「止めても、無駄だって……茅紗だって分かってるくせに……」