トワイライト(下)

追い払われるように店を抜け出して店舗を眺め、閉店準備をする姿を目にして足を進めて行く。

ドアに手を掛ける前に彼が片手で開き、迎え入れるように声を掛けて来る。


「お疲れ様、どこでも好きな所に座って待ってて、直ぐ行くから」


そう言って店先のロールカーテンを全て下げ、迷う自分の背に軽く手を添えて真ん中の席を促した。


「話があるって……なに?」


ビニール製のケープを巻きながら鏡越しに視線が合うと、彼は思い出したかのように口を開く。


「明日の昼から京都に行くから、早めに言って置こうと思って」

「京都に?」


少し怪訝な顔が鏡に映り、鋏を持つ彼に慌てて笑みを作って見せる。

すると同じように笑みを浮かべた彼が髪の毛を梳きながら言った。


「年に一度コンテストが開かれてて、俺は今年が最後の年で出て置きたいから」

「分かった……頑張ってね」

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