トワイライト(下)

そして迎えた金曜当日の朝に寝惚けた目で携帯を眺め、残されたメッセージを確認すると、上位の入賞を報せる楯に天使が寄り添うガラス製のトロフィーの写真が添付されていた。

幾つか此方の心配を伺うような文章を目にし、笑みを浮かべながら一番新しいメッセージを見つめる。


【茅紗が出掛ける頃には帰れると思うけど、余り遅くならないようにして、早く会いたいから】


最早、言葉に迷いなど無くなっていた。


【私も遼葵に会いたい、やっぱり昨日は一人じゃ寂しかった、でも今日は約束してくるから行ってくる、早めに帰るから】


【分かった、気をつけて行って来て、もし寝てたら殴って起こしていいから】


思わず笑ってしまった顔は何処を取っても緩んでおり、それは見なくても分かるほど腑抜け、頬が高揚して熱が上昇していくのを感じながらも幸せに浸る。

手にしなくても分かる感触や肌の温もり、髪の毛と髭の柔らかさや微かな煙草の香り、未だテーブルの脇に置かれた白地に青の表示。

それらを目にしながら着替えを済ませ、指差し確認をして部屋を抜け出す。

彼女から贈られた生成りに可愛いレースの付いた服はワンピースだった。
少し肌寒さに身を縮めながら通勤路を歩き、柔らかく揺れる裾に彼の姿を思い浮かべる。

再び増えた揃いの物に幸せを重ね、ビルの中に潜り込んで店先へと足を運んだ。

「おはよう、今日は五分前よ、やれば出来るじゃない」
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