トワイライト(下)
それから二人で他愛の無い会話をしながら彼女の"彼氏"を待ち続け、幾ら時間を潰しても中々現れないことに彼女も不安な面持ちを浮かべる。
結局、姿が見えた頃には深夜を過ぎており、酒が入ったのも手伝って早く家に帰りたくなった。
仲睦まじい二人を目の前に言い出せず、更に酒を含んで瞼が重くなってくる。
状況を捉えてるのかも分からない視界は明るさを失い、薄れる意識の中で彼女の声が自分を呼び掛けていた。
まだ明るさの残る瞼を覆う大きな影を感じた瞬間、彼女の声が少しだけ上がって響く。
「ダメよ!……この子は私が背負わないと」
ゆらゆらと揺れる身体に心地良くなり、次第に意識は遠退いていった。
「すいませ……かけて……」
「いいえ……こそ……こんな……まで……でした」
細々とした声に薄目が開くものの瞼は閉じる一方、覚えのある感触と温もりに包まれた身体が再び揺れ始める。
ふうわりとした中で何度も呼びかける声も他所に深くまで沈み込む。
耳元を生温かい風が吹き抜け、柔らかいシートに座って映画を観ていた。
次々に場面が変わって緊迫した空気が漂い、かさついた手が絡んでくる。
『こんな……で、良く……ね……そろそろ……して……マジで』