異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「僕たちにちょうどいい甘さだよ! クッキーよりも柔らかくてふわふわしてる! それに、サツマイモってこんなに甘かったんだね!」
「ふだんはどうやって食べてたの?」
「そのままかじってた。ガルフは焼くこともあったけど、こんなふうにならなかったよ」
「最初に少し蒸してから、小さめの角切りにしてマフィンに入れたの。生地に少し甘みをつけたから、サツマイモに蜂蜜は使ってないんだ。気に入ってもらえてよかった」
他のスイーツの試食も、ナッツくんは全力で、ガルフさんは静かながらも感激の含んだ反応で喜びを表してくれた。
「この、モンブランというものの、山のような部分は崩していいのか……?」
「はい。マロンクリームなので、がぶっといっちゃって大丈夫です」
「そうか。……む、口の中で溶けるな。これがクリームか」
「お姉ちゃん。こっちの、アップルパイっていうのはどうやって食べるの?」
「パイの中に、丸ごとのリンゴが入ってるの。焼きリンゴのパイ包みって言ったほうがわかりやすいかな……。ガルフさんなら丸かじりできそうだけど、ナッツくんのぶんはナイフで切ってあげるね」
そんな会話を交わしつつ、トレイの上は、あっという間に空になった。
「どれもうまかった……。スイーツとは、こんなに幸せな気持ちになるものだったのだな。今まで食事というのは、生きるために仕方なくするものだと思っていたが……」
「だから言ったでしょ、ガルフは絶対気に入るって」
仲間が当たり前に食べているものが食べられない。それはどれだけさびしくてつらかったことだろう。そんなガルフさんに食べることの喜びを見出してもらえたなら、これ以上嬉しいことはない。
だって、スイーツは幸せを与えるためにある食べものだから。
ただ必要なだけ食事をするのだったら、甘いものを食べなくても生きていける。それなのにスイーツを追い求めるのって、みんな『幸せ』を感じたいからなんじゃないかな。ひとりじゃなくて誰かと食べたくなるのは、相手と『幸せ』と共有したいからなんじゃないのかな。
ここにガルフさんを連れてきたナッツくんみたいに。
「本当に、喜んでもらえてよかったです」
ほっと胸をなで下ろし、店内がほわっとした空気に包まれたとき。
「感動的な場面に水を差すようで悪いが、俺たちのぶんはないのか? 新作は献上しろと言っておいたはずだが」
「ちょっと! でん……アルトさま。タイミングを考えてくださいよ」
アルトさんの、空気を読まない俺様発言に、ベイルさんが慌てている。
「ふだんはどうやって食べてたの?」
「そのままかじってた。ガルフは焼くこともあったけど、こんなふうにならなかったよ」
「最初に少し蒸してから、小さめの角切りにしてマフィンに入れたの。生地に少し甘みをつけたから、サツマイモに蜂蜜は使ってないんだ。気に入ってもらえてよかった」
他のスイーツの試食も、ナッツくんは全力で、ガルフさんは静かながらも感激の含んだ反応で喜びを表してくれた。
「この、モンブランというものの、山のような部分は崩していいのか……?」
「はい。マロンクリームなので、がぶっといっちゃって大丈夫です」
「そうか。……む、口の中で溶けるな。これがクリームか」
「お姉ちゃん。こっちの、アップルパイっていうのはどうやって食べるの?」
「パイの中に、丸ごとのリンゴが入ってるの。焼きリンゴのパイ包みって言ったほうがわかりやすいかな……。ガルフさんなら丸かじりできそうだけど、ナッツくんのぶんはナイフで切ってあげるね」
そんな会話を交わしつつ、トレイの上は、あっという間に空になった。
「どれもうまかった……。スイーツとは、こんなに幸せな気持ちになるものだったのだな。今まで食事というのは、生きるために仕方なくするものだと思っていたが……」
「だから言ったでしょ、ガルフは絶対気に入るって」
仲間が当たり前に食べているものが食べられない。それはどれだけさびしくてつらかったことだろう。そんなガルフさんに食べることの喜びを見出してもらえたなら、これ以上嬉しいことはない。
だって、スイーツは幸せを与えるためにある食べものだから。
ただ必要なだけ食事をするのだったら、甘いものを食べなくても生きていける。それなのにスイーツを追い求めるのって、みんな『幸せ』を感じたいからなんじゃないかな。ひとりじゃなくて誰かと食べたくなるのは、相手と『幸せ』と共有したいからなんじゃないのかな。
ここにガルフさんを連れてきたナッツくんみたいに。
「本当に、喜んでもらえてよかったです」
ほっと胸をなで下ろし、店内がほわっとした空気に包まれたとき。
「感動的な場面に水を差すようで悪いが、俺たちのぶんはないのか? 新作は献上しろと言っておいたはずだが」
「ちょっと! でん……アルトさま。タイミングを考えてくださいよ」
アルトさんの、空気を読まない俺様発言に、ベイルさんが慌てている。