異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
純ココアと砂糖を合わせたものを、少量の水で練って、牛乳を加えていく。沸騰させる前に火を止めるのを忘れずに。
「うん、こんなものかな」
味見して、甘さと濃さのバランスを調節したら、カップに注ぐ。よりスイーツっぽくするために、表面にホイップした生クリーム を絞ってできあがり。
「お待たせしました」
アルトさんが座っている、店内のカフェスペースにココアを持っていく。
テーブルの上にカップを置くと、アルトさんが「ん?」という表情で私を見上げた。
「これはクリームじゃないのか?」
「ココアという飲み物です。上に載っているのはクリームですけど……。混ぜないで、そのまま飲んでみてください。あ、熱いので気をつけて」
眉間に皺を寄せたまま、でも迷いなく、アルトさんはココアを口に運ぶ。ゆっくりとカップが傾いたそのとき、アルトさんの表情が驚きでいっぱいになった。
「これは……。今まで飲んだお茶のどれとも違うな。甘くてとろりとしていて、飲み物なのかスイーツなのかわからない……。そして甘い中に見え隠れする苦みが、この独特な風味をもたらしているのか。媚薬というのもわかる、癖になる味だ」
おいしいものを食べ慣れている王子らしく、すらすらと感想を述べてくれる。飲んでいるのはココアだけど、ソムリエのようだ。
「そしてなんだかホッとするな。お茶とは違った良さというか、満足感がある。これだったら、風邪で具合が悪くてスイーツが食べられないときでも飲めるんじゃないか?」
「アルトさんは、風邪を引いたときでもスイーツがほしくなるんですか?」
「た、たとえ話だ! 別に、弱っているときだからこそお前のスイーツが食べたいとか、そんなことは言っていない」
「そ、そうですか」
それは、言っているのと同じなのでは……?
でも、アルトさんはすっかり甘党になったようだ。風邪のときに、すりおろしたりんごでもなくチキンスープでもなく、私のスイーツが食べたいだなんてパティシエ冥利につきる。食欲がなくても、大好物だったら入ることってよくあるもんね。アルトさんが風邪を引くところなんてあまり想像できないけれど。
「時間がたつとココアの熱でクリームが溶けてくるんです。また違った味わいが楽しめますよ」
「む、これはいいな。クリームがココアに混ざり合ってまろやかになる」
嬉しそうに口の端を持ち上げて、アルトさんはアツアツのココアをあっという間に飲み干してしまった。
「これで終わりか……。満足感はあるけれどもう少し飲みたい感じだな」
空になったカップを覗きこんで、そう漏らすアルトさんは子どもみたいでかわいかった。
「カップが紅茶用の小さいやつですからね。よかったらもう一杯入れるので、休憩室に移動しませんか? ミレイさんと作戦会議する前にいろいろ、相談にのってもらえたら嬉しいんですけど……」
「ああ、もちろんだ」
休憩室でココアを挟みながら、あれやこれやと案を出す。アルトさんはココアパウダーの特性をすぐに理解してくれたし、男性の意見が聞けたのはとてもありがたかった。
休憩室のテーブルの上はすぐに、スイーツをスケッチした紙と色鉛筆でいっぱいになって、王子なのに一市民の恋愛成就作戦にここまで親身になってくれること、優秀なことで有名なふたりのお兄さんにはない アルトさんだけの長所なんじゃないかなって、そう思った。
「うん、こんなものかな」
味見して、甘さと濃さのバランスを調節したら、カップに注ぐ。よりスイーツっぽくするために、表面にホイップした生クリーム を絞ってできあがり。
「お待たせしました」
アルトさんが座っている、店内のカフェスペースにココアを持っていく。
テーブルの上にカップを置くと、アルトさんが「ん?」という表情で私を見上げた。
「これはクリームじゃないのか?」
「ココアという飲み物です。上に載っているのはクリームですけど……。混ぜないで、そのまま飲んでみてください。あ、熱いので気をつけて」
眉間に皺を寄せたまま、でも迷いなく、アルトさんはココアを口に運ぶ。ゆっくりとカップが傾いたそのとき、アルトさんの表情が驚きでいっぱいになった。
「これは……。今まで飲んだお茶のどれとも違うな。甘くてとろりとしていて、飲み物なのかスイーツなのかわからない……。そして甘い中に見え隠れする苦みが、この独特な風味をもたらしているのか。媚薬というのもわかる、癖になる味だ」
おいしいものを食べ慣れている王子らしく、すらすらと感想を述べてくれる。飲んでいるのはココアだけど、ソムリエのようだ。
「そしてなんだかホッとするな。お茶とは違った良さというか、満足感がある。これだったら、風邪で具合が悪くてスイーツが食べられないときでも飲めるんじゃないか?」
「アルトさんは、風邪を引いたときでもスイーツがほしくなるんですか?」
「た、たとえ話だ! 別に、弱っているときだからこそお前のスイーツが食べたいとか、そんなことは言っていない」
「そ、そうですか」
それは、言っているのと同じなのでは……?
でも、アルトさんはすっかり甘党になったようだ。風邪のときに、すりおろしたりんごでもなくチキンスープでもなく、私のスイーツが食べたいだなんてパティシエ冥利につきる。食欲がなくても、大好物だったら入ることってよくあるもんね。アルトさんが風邪を引くところなんてあまり想像できないけれど。
「時間がたつとココアの熱でクリームが溶けてくるんです。また違った味わいが楽しめますよ」
「む、これはいいな。クリームがココアに混ざり合ってまろやかになる」
嬉しそうに口の端を持ち上げて、アルトさんはアツアツのココアをあっという間に飲み干してしまった。
「これで終わりか……。満足感はあるけれどもう少し飲みたい感じだな」
空になったカップを覗きこんで、そう漏らすアルトさんは子どもみたいでかわいかった。
「カップが紅茶用の小さいやつですからね。よかったらもう一杯入れるので、休憩室に移動しませんか? ミレイさんと作戦会議する前にいろいろ、相談にのってもらえたら嬉しいんですけど……」
「ああ、もちろんだ」
休憩室でココアを挟みながら、あれやこれやと案を出す。アルトさんはココアパウダーの特性をすぐに理解してくれたし、男性の意見が聞けたのはとてもありがたかった。
休憩室のテーブルの上はすぐに、スイーツをスケッチした紙と色鉛筆でいっぱいになって、王子なのに一市民の恋愛成就作戦にここまで親身になってくれること、優秀なことで有名なふたりのお兄さんにはない アルトさんだけの長所なんじゃないかなって、そう思った。