異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
決行当日。上品なドレス姿で現れたミレイさんにエプロンを渡し、厨房に入ってもらう。
「まあ……思っていたより広いんですね。それに、見たことのない道具がたくさん」
ミレイさんは、調理台の上に置いた泡立て器や、魔法石つきの冷蔵庫に興味津々の様子だった。
「クッキーの生地は準備しておいたので、ここから一緒にやってみましょうか」
冷蔵庫で休ませておいた生地を取り出して、まな板の上に載せる。ミレイさんにやってもらうのは生地を伸ばして型を抜くのと、焼き上がったあとにデコレーションする作業だから、初心者でもできるはずだ。
「は、はい」
ミレイさんの手つきはぎこちなかったけれど、真剣な表情は見ていてほほえましかった。薄く広げられた生地はハート型で抜かれ、ちょっとがたついたチェック模様もできあがった。
「いい感じです。それじゃこれをオーブンで焼きますね」
「はい……」
ミレイさんの顔は紅潮していて、じんわり汗もかいているようだ。よっぽど肩に力が入っていたのだろう。
「お茶を淹れますので、焼いている間ちょっと休憩しましょう」
厨房に椅子を持ち込んで、オーブンの様子を見ながらの休憩になった。
「あの。ミレイさんに聞きたかったんですけど、ベイルさんのどんなところが好きなんですか?」
「えっ」
あんなにかっこよく助けられたら好きになっても無理はないと思うけれど、それは私がベイルさんの中身を知っているからだ、と思う。いくら好みのタイプのイケメンでも、性格がわからなかったら好きにならないだろう。ミレイさんのような慎重なタイプだったらなおさらだ。
「そうですね……。最初に素敵だと思ったのは助けていただいたときです。私を襲った男に向けた目が冷たくて、はじめは怖い人だと思ったんですけど、そのあと私に優しく微笑んでくださって……。怯えている私を安心させてくれようとしたんだってわかりました。冷静な騎士の顔と、青年としての顔……。ふたつを一度に拝見してドキドキしたことを覚えています」
竜騎士モードのベイルさんは、私でもゾクッとするくらいだったから、わかる。ときめきフィルターがかかって見えていなかったわけではなかったんだ。恐れられている『竜騎士』の一面を知っていても、それを含めて好きってことなんだ。
「お礼を渡したときには、憧れくらいの気持ちだったんですけど……。それから毎日言葉を交わす ようになって、飾らない気さくさとか、紳士的なところとか、包み込んでくれるような優しさとか……そんなところを感じるようになって。これが恋なんだって気付く前から、私はベイルさんに恋をしていたのだと思います」
思わず、顔をおおって『キャー』と叫び出しそうだった。日本の女子高生だったら、間違いなくそうしていたと思う。そのくらい、聞いているこちらがキュンキュンしてしまうエピソードだった。
「まあ……思っていたより広いんですね。それに、見たことのない道具がたくさん」
ミレイさんは、調理台の上に置いた泡立て器や、魔法石つきの冷蔵庫に興味津々の様子だった。
「クッキーの生地は準備しておいたので、ここから一緒にやってみましょうか」
冷蔵庫で休ませておいた生地を取り出して、まな板の上に載せる。ミレイさんにやってもらうのは生地を伸ばして型を抜くのと、焼き上がったあとにデコレーションする作業だから、初心者でもできるはずだ。
「は、はい」
ミレイさんの手つきはぎこちなかったけれど、真剣な表情は見ていてほほえましかった。薄く広げられた生地はハート型で抜かれ、ちょっとがたついたチェック模様もできあがった。
「いい感じです。それじゃこれをオーブンで焼きますね」
「はい……」
ミレイさんの顔は紅潮していて、じんわり汗もかいているようだ。よっぽど肩に力が入っていたのだろう。
「お茶を淹れますので、焼いている間ちょっと休憩しましょう」
厨房に椅子を持ち込んで、オーブンの様子を見ながらの休憩になった。
「あの。ミレイさんに聞きたかったんですけど、ベイルさんのどんなところが好きなんですか?」
「えっ」
あんなにかっこよく助けられたら好きになっても無理はないと思うけれど、それは私がベイルさんの中身を知っているからだ、と思う。いくら好みのタイプのイケメンでも、性格がわからなかったら好きにならないだろう。ミレイさんのような慎重なタイプだったらなおさらだ。
「そうですね……。最初に素敵だと思ったのは助けていただいたときです。私を襲った男に向けた目が冷たくて、はじめは怖い人だと思ったんですけど、そのあと私に優しく微笑んでくださって……。怯えている私を安心させてくれようとしたんだってわかりました。冷静な騎士の顔と、青年としての顔……。ふたつを一度に拝見してドキドキしたことを覚えています」
竜騎士モードのベイルさんは、私でもゾクッとするくらいだったから、わかる。ときめきフィルターがかかって見えていなかったわけではなかったんだ。恐れられている『竜騎士』の一面を知っていても、それを含めて好きってことなんだ。
「お礼を渡したときには、憧れくらいの気持ちだったんですけど……。それから毎日言葉を交わす ようになって、飾らない気さくさとか、紳士的なところとか、包み込んでくれるような優しさとか……そんなところを感じるようになって。これが恋なんだって気付く前から、私はベイルさんに恋をしていたのだと思います」
思わず、顔をおおって『キャー』と叫び出しそうだった。日本の女子高生だったら、間違いなくそうしていたと思う。そのくらい、聞いているこちらがキュンキュンしてしまうエピソードだった。