異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「そうしたらこんなふうに、りんごが重ならないように花びら状に並べて……っと」
その上からそぉっと、すりおろしたりんごを加えたパンケーキ生地を流し込む。
「弱火にして、蓋をしてこのままじっくり焼くね。いつものパンケーキより、分厚くて大きいから」
「じゃあ、その間にお母さんはスープを作ろうかしら」
「私はパンケーキの上に乗せるものを作っちゃうね」
りんごのパンケーキだけでもおいしいけれど、私が食べたいのはクリームたっぷりのスイーツだ。生クリームを添えるのは無理だけど、カスタードクリームならキッチンにある材料で作れる。
コーンスターチ、卵黄、砂糖をボウルに入れて泡立て器でかき混ぜる。
ハンドミキサーがないから時間がかかるけれど、まったく苦にならない。
なんせ、十六年ぶりのお菓子作りなのだ。以前だったら面倒だった作業も、楽しくて楽しくて仕方ない。
鼻歌を歌いながら、天にも昇る気持ちで腕を動かしていたら、カスタードクリームがいい感じに固まってきた。
「エリー、スープはできたけど、そっちはどう?」
「ちょっと待ってね」
蓋を開けてパンケーキの焼き加減を確認すると、ちょうどよさそうだった。
「こっちもいいみたい! じゃあ、お皿に盛り付けるね」
フライパンの上に大き目のお皿をぱこっと被せて、そのままひっくり返す。そうすると、キャラメルりんごがお花のように並んだ、見た目も楽しいパンケーキが顔を出した。
「まあ、綺麗ねえ!」
お母さんが目を丸くして、本物のお花を見たときのようにうっとりした表情になる。想像通りの反応がうれしくて、にんまりしてしまった。
初めて見るスイーツを目の前にしたときの女性の喜びかたって、異世界でも共通なんだな。前世の節約レシピ経験が役に立ってよかった。『あるもので作る』のって、スイーツだと特にむずかしい。
「りんごのフライパンケーキだよ。おやつにもなるけど、昼食にもぴったりでしょ?」
アップサイドダウンケーキともいって、缶詰のパイナップルとチェリーで作ることも多いお菓子だ。
「確かに、これだけ大きかったら、みんなでわけてもじゅうぶんね。砂糖が入っているなんて、どんな味なのかしら。甘いっていうけれど、果物の甘さとは違うんでしょう?」
「そうだね。すっぱさのない純粋な甘さ……って本には書いてあったよ」
お母さんの言葉に我慢できなくなったのか、マリーとコージーが椅子から下りて駆け寄ってきた。
「マリーにも見せて!」
「僕にも!」
「いいよ、はい」
すごいすごい、とお皿を覗き込んでいる双子に、ボウルに入ったカスタードクリームを見せてみる。
「食べるときには、こっちのカスタードクリームをつけて食べるの」
「とけかけのきいろいバターみたい」
「でもなんだか、ぷるぷるしてる」
きゃっきゃとはしゃぐふたりの頬は紅潮していた。
「ねえねえ、はやく食べたい!」
「だめだめ。お父さんが帰ってくるまで待たなきゃ」
そうつぶやいた途端、ダイニングにつながる玄関扉が開かれ、お父さんが顔を出した。
その上からそぉっと、すりおろしたりんごを加えたパンケーキ生地を流し込む。
「弱火にして、蓋をしてこのままじっくり焼くね。いつものパンケーキより、分厚くて大きいから」
「じゃあ、その間にお母さんはスープを作ろうかしら」
「私はパンケーキの上に乗せるものを作っちゃうね」
りんごのパンケーキだけでもおいしいけれど、私が食べたいのはクリームたっぷりのスイーツだ。生クリームを添えるのは無理だけど、カスタードクリームならキッチンにある材料で作れる。
コーンスターチ、卵黄、砂糖をボウルに入れて泡立て器でかき混ぜる。
ハンドミキサーがないから時間がかかるけれど、まったく苦にならない。
なんせ、十六年ぶりのお菓子作りなのだ。以前だったら面倒だった作業も、楽しくて楽しくて仕方ない。
鼻歌を歌いながら、天にも昇る気持ちで腕を動かしていたら、カスタードクリームがいい感じに固まってきた。
「エリー、スープはできたけど、そっちはどう?」
「ちょっと待ってね」
蓋を開けてパンケーキの焼き加減を確認すると、ちょうどよさそうだった。
「こっちもいいみたい! じゃあ、お皿に盛り付けるね」
フライパンの上に大き目のお皿をぱこっと被せて、そのままひっくり返す。そうすると、キャラメルりんごがお花のように並んだ、見た目も楽しいパンケーキが顔を出した。
「まあ、綺麗ねえ!」
お母さんが目を丸くして、本物のお花を見たときのようにうっとりした表情になる。想像通りの反応がうれしくて、にんまりしてしまった。
初めて見るスイーツを目の前にしたときの女性の喜びかたって、異世界でも共通なんだな。前世の節約レシピ経験が役に立ってよかった。『あるもので作る』のって、スイーツだと特にむずかしい。
「りんごのフライパンケーキだよ。おやつにもなるけど、昼食にもぴったりでしょ?」
アップサイドダウンケーキともいって、缶詰のパイナップルとチェリーで作ることも多いお菓子だ。
「確かに、これだけ大きかったら、みんなでわけてもじゅうぶんね。砂糖が入っているなんて、どんな味なのかしら。甘いっていうけれど、果物の甘さとは違うんでしょう?」
「そうだね。すっぱさのない純粋な甘さ……って本には書いてあったよ」
お母さんの言葉に我慢できなくなったのか、マリーとコージーが椅子から下りて駆け寄ってきた。
「マリーにも見せて!」
「僕にも!」
「いいよ、はい」
すごいすごい、とお皿を覗き込んでいる双子に、ボウルに入ったカスタードクリームを見せてみる。
「食べるときには、こっちのカスタードクリームをつけて食べるの」
「とけかけのきいろいバターみたい」
「でもなんだか、ぷるぷるしてる」
きゃっきゃとはしゃぐふたりの頬は紅潮していた。
「ねえねえ、はやく食べたい!」
「だめだめ。お父さんが帰ってくるまで待たなきゃ」
そうつぶやいた途端、ダイニングにつながる玄関扉が開かれ、お父さんが顔を出した。