保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。
『うるさいよ』
『その声で』
『呼ばないで』
『俺以外の男の名前なんて』
そんな意味を込めて。
いや違う。ただの欲。
いややっぱりどうなんだろう。
嫉妬なのか欲なのか。その両方なのか。
「……っ!!」
俺以外のふたりを擁護しようと必死なその唇を、強引に塞いだ。
「な、なにしてっ」
「手っ取り早くあったかくなる方法」
お互いの吐息がかかる距離でそういう。
熱い。もうだいぶ。
「は?」
「人の心の中なんて見えないんだから。勝手に決めつけない方がいいよ。ていうか、あのふたりだって知らないでしょ?郁田さんが俺に触られてる時にどんな顔するか」
そういうと、羞恥からか彼女の顔が赤くなる。
そんな顔する郁田さんが悪い。
「今日はもう解散だって」
雨がだんだんと小降りになってきたタイミングで、郁田さんに自分のスマホ画面を見せる。
長山とのメッセージ。
雨も降ってきたこともあり、それぞれで解散しようということになった。
「そう……」
「俺んち近いから、電車乗る前に一旦うちで身体拭きなよ」
「い、行くわけないでしょ!」
「そんなびしょ濡れのまま電車乗れるの?」
「でも、百合ちゃんたち……」
「あっちもゆっくり買い物できた方がいいでしょ。先に帰るって言ったほうが向こうも気を使わない。大丈夫。何もしないから」
完全に雨が止んでそこから立ち上がり、俺たちは園内を出ようと歩き出した。