保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。
「見て見ぬ振りして気付くのを怖がっていた気持ちに、郁田さんが寄り添ってくれた。ちゃんと。だから謝ったりしないで」
「……っ、う、うん。あり、がと」
「ハハッ。そんな固まるかな」
「だって夏目くんがいつもと違うから」
「うん。なんでだろうね」
なんでだろうねって……。
意地悪で自分勝手に触れてくる時の彼じゃないから、どうしていいかわかんないよ。
「あの、わかったから手」
「ん?」
「手、離してよ」
「あぁ……」
曖昧な返事をして夜空を見上げた夏目くんが、ゆっくりと視線を落としてこちらに視線を合わせる。
「やだ」
「はっ……?」
「俺決めたから、郁田さんのこと離さないって」
「いやいやいや!!」
歩き出そうとする夏目くんを引き止める。
「あれ、それともまだ、帰りたくないのかな?」
「はぁん?」
「もう意地悪しないから、覚悟しててね。菜花ちゃん」
夏目くんはそう言って満足そうに笑うと、私の手を引いて歩き出した。