保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。

「何?!」

自分のデコルテあたりに触れると、何やらネックレスのような手触りをしたものが首にかけられていた。

驚いたまま隣の夏目くんを見れば「鏡、向こう」と洗面所に行くのを促されて、私は早足で向かう。

「わっ……これって……」

ホテルの大きな鏡に映った自分の首元に光るもの。

爽やかなパステルイエローの小さな花が3つ連なったネックレスだ。

「夏目くんっ!なにこれっ!」

自分の声のテンションが明らかに高くなってしまう。

「菜の花。今日行った商店街で見つけたの。即、郁田さんの顔が浮かんで……」

菜の花……。

なんだか今日はよく、自分の名前の花に触れられる日だな。

って、それよりも!

「夏目くん、これ買ったの?!」

「うん。やっぱりよく似合うね」

「……っ、」

鏡越しで、夏目くんと視線が交わってすぐ晒す。

なんだろう。
直接目が合うよりも、恥ずかしい。

っていうかなんでネックレス買ったりなんて。

正直、こんなことされたら浮かれてしまうじゃん。

夏目くんも、私のこと本気で考えてくれてるのかなって。

でもそんな希望を抱いてあとで落とされるのが怖いから。

簡単にその一歩なんて踏み出せない。
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