保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。

「可愛いなぁ、菜花。恋する乙女って感じ!今日こそふたりで回ったりしないの?うちら全然大丈夫だよ?むしろ今日こそ!結ばれ───」

「べ、別に探してなんか……!」

「夏目くーーんっ!グループで一緒に写真撮らない?」

っ?!

彼の名前を呼ぶ声がどこからか聞こえて、思わず反応して振り返ると。

少し離れたキャラクターのオブジェがあるところで、女子グループが夏目くんたちのグループに話しかけていた。

「あ、夏目くんいたじゃん……って、クソッ、邪魔者が……」

「光莉」

そんなこと言っちゃダメだよ、と制する意味で光莉の名前を呼んだけど……。

女の子たちに明るく「撮ろう撮ろう」と爽やかな笑顔を振りまいているのを見て、

胸がギュッと痛くなる。

何あれ……自分だってほかの女の子たちと楽しそうにしてるじゃない。

昨日、私にあんなこと言ってたくせに。

フンッ、なんなのよっ。
本当、夏目くんってわかんない。

彼の言葉を、いちいち真に受ける私が悪いんだけれど。

ムカつく。

「行くよ、光莉!今日は全部乗り物制覇が目標なんだから!」

「え、ちょっと菜花。全制覇は無理だって」

「いいから!早くしなきゃ!」

光莉の手をとって夏目くんのいる場所から真逆の方向に進みながら、

私たちはテーマパークの乗り物へと向かった。
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