保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。

「私、天井月子って言います」

「……っ?!」

えっ。
今、天井月子って……。

噂でしか、話でしか知らなかった彼女を、初めて目の当たりにして、固まってしまう。

この人が……天井月子先輩……。

勝てない。瞬時にそう思った。
その美貌と愛嬌。

というか、勝てないもなにも、ふたりが付き合った時点で負けてるじゃん。

もう終わっている話だ。

それなのにこのタイミングで突然話しかけてくる天井先輩。

何の用なんだ。

「涼々から聞いてるのかな?私のこと」

『涼々』
親しげな呼び方に、胸がギュッと痛くなる。

「えっと……少しだけ……」

「そっか。ちょっとこれから時間あるかな?色々と聞きたいことがあって」

ニコッと笑った天井先輩の瞳が、笑っていない気がした。

これ、よくドラマや漫画なんかで見るやつじゃない。

『夏目くんは私の彼氏だから、ちょっかい出さないで』

とか言われちゃうやつだ。
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