保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。
*
────ガチャ
「……へ、嘘」
息を切らしながら勢いよくドアを上げれば。
振り返った彼がこちらをまっすぐみて固まっていた。
「え、……夢?」
固まったまま口だけ動かす夏目くんに、何か言わなきゃいけないのに、
なかなか息が整わないのと同時に、
こんなに全力疾走したことなんて今までにあっただろうかと思う。
誰かに会うために、必死になってここまで走ったのなんて初めてだ。
大きく肩が上下して。
「郁田さん、走って、来たの?」
彼の問いに、素直に答えるのが恥ずかしくて目をそらしてしまう。
だからダメなんだよ、私。
会いたくて必死になって走ったくせに、いざ顔を見たらどう話していいのか分からなくて。
「……こっち座って」
促されるまま、少し距離をあけて階段へと座る。
「……えっと、」
だいぶ呼吸が整って、ようやく声を出したけど、私のそのか細い声はすぐにかき消された。