保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。



────ガチャ

「……へ、嘘」

息を切らしながら勢いよくドアを上げれば。

振り返った彼がこちらをまっすぐみて固まっていた。

「え、……夢?」

固まったまま口だけ動かす夏目くんに、何か言わなきゃいけないのに、

なかなか息が整わないのと同時に、

こんなに全力疾走したことなんて今までにあっただろうかと思う。

誰かに会うために、必死になってここまで走ったのなんて初めてだ。

大きく肩が上下して。

「郁田さん、走って、来たの?」

彼の問いに、素直に答えるのが恥ずかしくて目をそらしてしまう。

だからダメなんだよ、私。

会いたくて必死になって走ったくせに、いざ顔を見たらどう話していいのか分からなくて。

「……こっち座って」

促されるまま、少し距離をあけて階段へと座る。

「……えっと、」

だいぶ呼吸が整って、ようやく声を出したけど、私のそのか細い声はすぐにかき消された。
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