保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。

「ま、いいわ。また涼々がいない隙狙って話しかけるから!じゃーね菜花ちゃん!」

「あ、はいっ!クッキーありがとうございました!」

月子先輩は私にひらひらと手を振って夏目くんに「ベー」と舌を出してから、その場を後にした。

夏目くんにあんな態度だけれど、今だって、月子先輩、私たちをふたりきりにしてくれたんだと思うから。

素敵な先輩だなと思う。

先輩の恋も……早く実るといいな。
好きな人には、全力で幸せになってほしいから。

「おはよ、郁田さん」

「あ、うん。おはよう」

ふたりきりになった途端、ふたりだけの空気が一気に流れて。

今ではドキドキとなる心臓の音でさえ心地良くて。

「やっぱり、朝、俺が郁田さんのこと迎えに……」

「それはいいって!」

夏目くんがうちに迎えにくるのは遠回りになるから大丈夫だと前から丁重にお断りしているのに、すぐそういうこと言うんだもんな。

気持ちはすごく嬉しいけど。

「だって朝から俺がいないところであんなにベタベタしてるの見せつけられたら──」

「見せつけられたら?」

「……ううん、なんでもない!行こうか遅れる」

そう夏目くんが少し口をつぐんだのを見逃さなかった。
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