あの空に手を伸ばして





たかしと仲直りして、たかしがこの学校にきてくれたことは本当に嬉しい。

たかしが変わってしまったのを悔やんでいたから、また真面目なたかしに戻ってくれて嬉しい。


・・・はずなのに。



どうしようもなく、つらい。


たかしが笑うたびにあずさの笑い顔がよぎる。

たかしが喋るたびにあずさの声がよぎる。

目の前にいるのは、たかしなのにたかしではないように思える。


そして聞こえてくる。

「人殺し」

たかしが実はそう言葉にしているんじゃないかって何度も思う。


口が開くたびに、いつかそういうんじゃないかって怯える。


俺は、やっぱり弱い人間だ。

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