あの空に手を伸ばして


こうして徹と忠と翠と出会い、美咲と出会い、変われたはずなのに。

俺は小学生のころからきっとずっと変わっていない。

笑っているけど、自分が本当に笑えているのかもわからない。



美咲が教えてくれたこと。

死んだ人は空から見守ってくれてるということ。

だから空に手を伸ばしたら気づいてくれるということ。




なあ、あずさ。

空からみた俺はどんな風にみえる?

あずさと出会ったときの俺とは風貌が全然違うけど、俺だって気づいてくれてる?

俺、ちゃんと笑えてる?


小学生のときに自分を抱きしめていたように、俺は自分を抱きしめる。

まだ小さくてすっぽりと抱きしめられた体は、余るくらい大きくなった。


涙が流れ落ちた。



下の階からは親が喧嘩している声が聞こえる。

俺はその声が聞こえないように布団をかぶった。


またこれから悪夢がはじまる――
< 120 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop