あの空に手を伸ばして
こうして徹と忠と翠と出会い、美咲と出会い、変われたはずなのに。
俺は小学生のころからきっとずっと変わっていない。
笑っているけど、自分が本当に笑えているのかもわからない。
美咲が教えてくれたこと。
死んだ人は空から見守ってくれてるということ。
だから空に手を伸ばしたら気づいてくれるということ。
なあ、あずさ。
空からみた俺はどんな風にみえる?
あずさと出会ったときの俺とは風貌が全然違うけど、俺だって気づいてくれてる?
俺、ちゃんと笑えてる?
小学生のときに自分を抱きしめていたように、俺は自分を抱きしめる。
まだ小さくてすっぽりと抱きしめられた体は、余るくらい大きくなった。
涙が流れ落ちた。
下の階からは親が喧嘩している声が聞こえる。
俺はその声が聞こえないように布団をかぶった。
またこれから悪夢がはじまる――