あの空に手を伸ばして


「俺、サクと6年生ではじめて同じクラスになったけど少し前からサクのこと知ってたんだ」

「・・・いじめられてたから?」


中学のときは不良だったからみんなに知られる存在だったけど、小学生のときは逆。

いじめられていたから、きっと俺のことを知らない人のほうが少なかった。


「ううん。違う」


でもたかしははっきりとそういった。


「3年生くらいのときかな。たまたまみかけたんだ。横断歩道を渡り切れなかったおばあちゃんを助けてるとこ。車に乗ってる人は青信号なのに進めないことにイライラして平気でクラクション鳴らして。まわりにいた大人たちも誰も助けようとしてなかった。でも、そのときサクが走ってきて。「大丈夫?」って声かけて。手つないで横断歩道渡ってて」


かすかだけど記憶にはある。

あのとき、おばあちゃんはたくさんの荷物を持っていたからそれをかわりにもってあげて一緒に渡ったんだ。

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