あの空に手を伸ばして
「サクはもう、人のためにいきなくていい。自分のために、自分の幸せのために生きて。姉貴もそれを一番にのぞんでるよ」
そのとき風が強く吹いた。
――サクのこと、みてるからね
それとともにあずさの声が聞こえた気がした。
「ありがとう」
美咲のいった言葉はきっと正しい。
だって空を見上げたら、そこにはいつもと変わらないはずの空なのに、あずさがみていてくれるような気がするから。
ずっと、あずさの最期の顔しか思い浮かべられなかったのに、そこには俺が大好きだったあずさの笑った顔がみえる。
あの日からとまっていた俺の時間がまた動き出したような気がした。