あの空に手を伸ばして


「美咲ちゃんの家にお邪魔した帰りに一言いったんだ。「いいな」って。俺が聞き返したらなんでもない!って笑ってた。あのとき、ちゃんと聞いてあげてたらよかった」


「いいな」の一言にどれだけの思いがこめられていたんだろう。


仲良しでいいな?幸せそうでいいな?ごはん一緒に食べるのいいな?楽しそうでいいな?


ごく一般的な家庭の幸せを、サクは知らなかったんだ。



「なんで、俺たちに話してくれなかったんだろう」


翠くんの言葉に信号機くんたちもなにも知らなかったんだとわかる。


「あいつ、なんでも一人で抱え込みすぎなんだよ」

「俺たち、サクの友達になれてたのかな。サクは本当に心を開いてくれてたのかな」


涙を流し始めた3人に、さっきあれほど泣いてもう枯れたはずの涙が流れてくる。


「サクはみんなといるときが楽しかったから、その時間を壊したくなかったんだと思う。あんなに楽しそうに笑ってるサク、みたことなかったよ」

「それでも俺たちは、力になりたかった」


サク、ばかだよ。

こんなにも大事に思ってくれる友達がいるのに。

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