あの空に手を伸ばして


「よお、はやかったじゃねえかサクくん?」

そんなわたしの願いもむなしく、サクがあらわれた。

急いできたのか相当疲れている様子のサク。


でもわたしに気付くと途端に顔をかえた。


「おい!あずさをはなせ!」

「無理だね。あずさちゃんには死んでもらうんだから」

「・・死んで、もらう?」

「ああ。俺実は暴力団と関係をもってるんだ。それでお前に倒された話したら面白がってさ。いろいろお前の情報おしえてくれたんだよ。なあ、鬼頭サクくん?」

「ざけんな。だからってあずさは関係ないだろ!」

「いやー、本当はお前を殺してあげたいところなんだけどさ。このあずさちゃん?って子殺したほうがお前にダメージくらわせられるんじゃないかって思ってよ」


サクと男の会話を聞きながら、ほっとした自分がいる。


よかった、サクを殺さないならそれでいい。

死ぬのはわたしだけでいい。

死にたいわけじゃない。生きていたい。

でも、サクがこのまま死んでしまうくらいなら、わたしはいくらだって変わりになる。
< 192 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop