あの空に手を伸ばして
「なんかいいね」
いまだはしゃぎまわっている信号機くんたちをみていたら、急にうらやましく思えてきた。
この人たちはきっと何も考えていない。
先のことなんて何も考えずに今を生きている。
いま、自分がやりたいことを自由にやっている。
檻みたいな教室にいるよりもよっぽど楽しくて、自由な世界。
でも、その世界に飛び込む勇気はなくて、わたしはいつもやっているように手を伸ばした。
そこにあるのは晴れている空とは全く違う空だけど、つかんでみたいって思った。
灰色に覆われた雲を抜け出せばきっと空は明るい。
・・・でも、やっぱり無理だ。
つかめないことを知ったいま、そんなことをすることさえ意味がないと思ってしまう。
わたしは伸ばしていた手を静かに下げた。
サクはわたしの行動になにも言葉を発すことなく横に立っていた。
ただ、信号機くんたちのうるさい声が響きわたっていた。