あの空に手を伸ばして


やっぱり、わたしは馬鹿だった。

勝手に縛られて自由を奪っていたのは自分自身なのに。

「夜はわりと冷え込むかもしれないから、あとでスープ作ってあげるからもっていきなさい」

お母さんはきっとこういうだろうとか、反対するだろうとかそんなことばっか考えていた。

「本当に、ありがとう」

そういうとお母さんは嬉しそうに笑った。


小さいころお父さんが死んじゃってからずっと2人だった。

母子家庭で大変だと思うのに、いろんなところに連れてってくれて、遊んでくれて。


そんなお母さんに恩返ししようって思って、高校に入ったらバイトしようと思っていたのに、自分の未来が見えなくなって閉じこもって、恩返しどころか親不孝なことをしてしまったうえに、バイトができない高校を選んでしまった自分が情けなくて仕方なかった。

< 31 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop