あの空に手を伸ばして
「美咲さずいぶん前に空に手伸ばしてたときあったじゃん。でもあのときの表情寂しそうだったから。なんでだろうって思ってた」
こんな綺麗な星空をみれて、隣にはサクがいる。
それだけで幸せでこのまま時間が止まればいいのになんて考えていたわたしの耳に入ったのは、呟きに近い小さな声だった。
きっとこうして横に並んでいなかったら聞こえなかっただろう。
人に興味がないようにみえるのにどうしてあんな些細な行動を覚えているのだろう。そのときは全然興味がなさそうにただ横に立っていただけだったのに。
「サクはさ、あの空に手が届くかもって思ったことある?」
わたしはあの日と同じように空に手を伸ばした。
あの日は灰色の雲に覆われた空だったけれど、今日は違う。
星と月。
小さいころのわたしなら必死に手を伸ばしてつかもうとしていただろう。