あの空に手を伸ばして



「・・ど、こ?」

喉がからからに乾いていてうまく言葉がでない。

見慣れない大きな倉庫。
そこには数えきれないほどのバイクと、男たち。

「起きた?」

そして隣には薄気味悪い笑顔を浮かべた男。

コンビニの前で声をかけてきた男だ。


「だ、れ?」

「美咲ちゃんは知らなくていいよ。どうせ死ぬんだし」

「・・しぬ?」

全然意味がわからないけれど、手足は拘束されていて身動きがとれない。

それに男の右手には包丁。

「美咲ちゃんは囮だよ。かわいそうだけど、サクに関わったことを後悔しな」

囮?サク?

「どういう、こと?」

「サクの女なのになにも知らないんだ?過去のこととか」

「知らない・・それにわたしサクの女なんかじゃない・・」

いいながら自分がみじめになったけれど、そんなこと今はどうでもいい。

「わたしを囮にしてサクを誘い出そうとしてるなら無駄だよ。サクはこない。だって、サクにとってわたしはなんでもないんだから」

そう。なんでもない。

友達でも恋人でもなかった。


だって、サクのこと何も知らないから。
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