あの空に手を伸ばして
*
「・・ど、こ?」
喉がからからに乾いていてうまく言葉がでない。
見慣れない大きな倉庫。
そこには数えきれないほどのバイクと、男たち。
「起きた?」
そして隣には薄気味悪い笑顔を浮かべた男。
コンビニの前で声をかけてきた男だ。
「だ、れ?」
「美咲ちゃんは知らなくていいよ。どうせ死ぬんだし」
「・・しぬ?」
全然意味がわからないけれど、手足は拘束されていて身動きがとれない。
それに男の右手には包丁。
「美咲ちゃんは囮だよ。かわいそうだけど、サクに関わったことを後悔しな」
囮?サク?
「どういう、こと?」
「サクの女なのになにも知らないんだ?過去のこととか」
「知らない・・それにわたしサクの女なんかじゃない・・」
いいながら自分がみじめになったけれど、そんなこと今はどうでもいい。
「わたしを囮にしてサクを誘い出そうとしてるなら無駄だよ。サクはこない。だって、サクにとってわたしはなんでもないんだから」
そう。なんでもない。
友達でも恋人でもなかった。
だって、サクのこと何も知らないから。