あの空に手を伸ばして


わたしのお父さんは交通事故にあって亡くなった。


青信号を渡っていたところをバイクがつっこんできたのだ。

そのバイクを運転していたのは高校生だった。

その高校生は暴力団ともつながりがあったらしく、相当悪いことをやっていて何度も警察沙汰になっていたらしい。

そしてそのときも警察に追いかけられていてスピードをだしまくったうえ、信号無視をした。


そんな社会のはみ出し者にお父さんは殺された。


当時まだ小学生だったわたしは、その男のことなんて全く記憶になんてないけれど、お母さんはきっと覚えているだろう。

覚えているというよりは忘れられないというほうが強いかもしれない。


だからこそ、お母さんは不良というワードがとても嫌いだった。

もしかしたら最愛の人を殺した男に風貌が似ているのかもしれない。

でも、それでも徹くん、忠くん、翠くん、そしてサクのことを何も知らないのに決めつけてほしくなかった。

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