あの空に手を伸ばして
わたしはなにも言わずにお母さんに理解してほしいと思っていた。
中身も知らないくせにみんなのことをちゃらいというお母さんが許せなかった。
でも、そんなの当たり前だった。
わたしはなにひとつみんなのいいところを話していない。
学校のことでサク以外の話題について話していない。
それに、サクがいっていた「死んでいい人間なんて誰もいない」という言葉。
そんな当たり前のこと、わかってたはずなのに。
最愛の人を亡くしたお母さんに、「殺されてもよかった」なんていってしまった。
ぶたれて痛んだ頬。
でもきっと「そんなこと、嘘でもいわないで」と震えた声でいったお母さんの右手のほうがもっと痛かっただろう。