あの空に手を伸ばして
「ううん。わたしよりもお母さんの心のほうがよっぽど痛かったと思うから」
「・・・久しぶりに夢をみたわ。お父さんの夢」
「うん」
「あのときのことは今でも忘れられなくて。お父さんを殺した犯人の顔は脳裏に焼き付いてる。でも、だからといって美咲のお友達のこと、なにも知らないのに勝手に決めつけてた」
「ううん。わたしのほうこそ、なにもいわなかったから」
「美咲は、お父さんのこと覚えてる?」
「少しだけ・・遊んでもらった記憶はあるよ」
特別なにかを覚えているわけじゃないけれど、でもお父さんの顔は覚えているし、優しかった記憶はある。