死神は優しかった
プロローグ
「……え?ねぇ今何て言った?ねぇ、ねぇってば!」
「……ごめん、だから無理なんだって。俺には芽衣を幸せにできない。……ううん、違う。俺が幸せになれないんだ、芽衣といると」
「どうして?私のこと嫌いになったの!?」
あぁ、まただ。
また離れていく。
「芽衣は気づかなかった?俺、今までもこれからも、芽衣のこと本気で好きになったことなんてないよ」
「何で!?じゃあ……じゃあ、あの日言ってくれた言葉は……」
「あの日?いつのことか知んないけどいづれにせよ本気じゃないね。……じゃあ、俺もう行くから。これからは俺につきまとうなよ」
……これで何回目だろうか。
私ってそんなに騙しやすいの?
違うか、私が騙されやすいのか。
ずっとこんな調子だからちゃんとした恋愛経験なんて皆無に等しい。
だから男慣れしていないのも事実なわけで。
少し優しくしてもらっただけで、すぐ、意識をしてしまう。
意識しちゃったらもう、頭からその人のことが頭から離れなくなるし。
単純なんだよね、たぶん。
男はそういうの敏感だから、こういう単純な女は放っておかない。
すぐオモチャにしようとする。
それだって分かってる。
だから私に「可愛いね」とか「好きだ」なんて言ってくる人は疑ってかかった方がいいってことも。
私が一番よく分かってるのに。
……なんでかな。
今回は大丈夫。
ちゃんと愛してくれる。
心のどこかで希望を持っちゃって、それからはもう止められなくなる。
そう、例えるならそれは夢の中。
その時だけは幸せの絶頂にいるのに、はっと我に返った時にその夢から覚めてしまった事実に気づく。
そして、猛烈に後悔する___
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