死神は優しかった
昨日からいろんなことがありすぎている。
最愛の慶くんにフラれて、顔がいい優しい青年に助けられて、その翌日には佐藤先輩から直々にアシスタントのオファー……
正直、頭が追いついていかない。
「……ちょっと」
「……え?」
声をかけられて顔を上げると、七海先輩がすぐ目の前に立っていた。
あ、と気づく。
そうだ、この問題もできてしまったんだぁ……
「芽衣」
「……はい」
「芽衣って公希くんと仲良かったの?」
「い、いや、あのー……」
「まさか好き、とかじゃないよね?今まで私の話聞いてくれてたし」
「まさかそんなこと!!私は好きでもなんでもないです!!あ、あはは、先輩何言っちゃってるんですかぁ~」
「……ほんとに?」
「もうそんな深刻そうな顔して~。私彼氏いるんですからね?」
「……あ、そ、そっか!!そうだったね、慶くん、だっけ?大好きって言ってたよね」
「はい~毎日幸せです」
「もう~ラブラブしちゃって~」
別れましたけどね、昨日。
……なんて言えない。
七海先輩との関係が崩れることだけはしたくなかった。
だから、こんな小さなウソ、きっと神様だって許してくれる。
私は佐藤先輩のこと好きじゃないって言っても信じてくれないんだもん、しょうがない。
私はこのウソを、突き通すことにした。