恋慕花〜新撰組綺譚〜
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いつの間にか、近くにいた人々はいなくなっていた。
私と、死体だけが取り残された。
ザー………
雨が降ってきた。
大粒の雨が全身を容赦なく打つ。
人殺し、人殺しと、雨が自分を責め立てている気がした。
「ごめんなさい………ごめんなさい………」
サッ
「………ぇ?」
不意に雨が遮られた。
なんだと思って上を見やると、
「さっきの…お兄さん???」
そこには、先程場所と年を聞いた「イケメン兄ちゃん」が、傘を差して立っていた。
「一部始終見ちゃった。先程の雷について調べたいことがあるんだけど、悪いようにはしないから、僕の元へ来ない?……『拒否権なんて無いけど。』」
…ん?最後なんて言ったんだろう。
というかこの人、何で怖がらないんだろう。
原因が私かどうかハッキリしていないとはいえ、何かの拍子に雷が落ちてもおかしくはないのに。
「一部始終を見ていたのなら、なぜ逃げなかったの?もしかしたら死んでしまうかもしれないのに…」
「死なないよ。きっと。」
「………は?」