先輩、今から告白します。
「先輩、好きです。付き合ってください!!!」
「無理、ごめん」
松岡杏奈。
高校1年生。
新しい恋を求めて高校生を迎えたのだが…
私はいきなり、振られてしまった…。
入学式。
先輩に、コサージュをつけてもらう。
私の胸元にコサージュを優しく付けてくれた。
名前も知らない、イケメンな先輩。
私はつい一目惚れをして、何故か告白してしまった。
そして、一瞬で失恋。
さらに追い討ちをかけるかのように、私の告白の声は馬鹿デカかったため、周りにいた私と同じ新1年生にめっちゃくちゃ笑われた。
最悪な、スタートダッシュだ。
私の沈んだ心などお構いなしに、入学式は淡々と無事終了。
新1年生たちは一斉に各教室へと戻った。
教室での私の席は廊下側の後ろから2番目の所だった。
目立つわけもないこの席。
果たして、私は上手くやっていけるのか………
「おーい。取り敢えずみんなは、トイレ休憩だ。10分後に、始めるからそれまでには席につくように…」
担任らしき先生が、クラス中に響き渡る声で言うと、教室を静かに出て行った。
すると、一斉にざわつくクラスメート。
もう仲良く話してる人がいるんだけど?!
きっと、中学が一緒の人達だと思うけど……
そう考えていると、四方八方から、視線を感じた。
ん?
顔をゆっくり上げて周りを見渡すと…
「あの子、いきなり先輩に告白してたよね?!」
「だよね!!」
「知り合いやったのかな?」
「いや、違うでしょっ笑笑」
「だって即答で振られてたじゃん笑笑」
「あ、振られてたの?!」
「うん笑笑あれは爆笑だわ」
「あんな子いる?」
「入学早々に、告るとか考えられん笑笑」
「まじそれな、ひびったぁ、」
いろんな人がこっちを見て笑っている。
やっぱり、、、あれは目立ったんだな……
はぁ…
やばい初日からやらかした…
「ねぇ、あれ、本当に告白したの?」
目の前から声を掛けられて反射的にびくついた私。
「あ、え、あれは…うん、、、なんか、自分でもよくわからなくて…気付いたら振られてた…あは…」
私の目の前に座っている女の子は、とても美人で綺麗な人だった。
女の私でさえも、見惚れてしまうぐらいだ。
「どんまい笑、一目惚れってこと?」
首を傾げた拍子にふわっと髪の毛が揺れる。
凄く良い香り…。
シャンプーの匂い?
それとも、柔軟剤の匂い?
凄く落ち着く香りだな…
「そ、そーかも…その、瞳がっ…」
言いかけて、辞めた。
だって、絶対、馬鹿にされそうな気がしたから。
「瞳…がどうしたの?あ、見た目が王子様✨ってこと?」
ギクッ…
図星だった…。
待って、この人私の心読み取れるわけ?
「って…顔に書いてある笑」
私の顔を指差して、微笑んだ。
「…そ、その通りです………」
「あはは、やっぱり、わかりやすいね…」
笑顔が素敵だ。
凄く綺麗な笑い方をするんだなぁ。
羨ましい。
こんな風に可愛く笑ってみたいな。
「名前は?」
「わ、私?」
「ふっ…ほかに誰がいるのよ笑笑」
またしても、美女は吹き出して笑う。
「あ、ま、松岡、杏菜ですっ」
「あ!下の名前一緒じゃん!笑、私も杏奈って言うの!松山杏奈。よろしくね?」
嘘…。
こんな人いる?!
凄く、良い子で優しくて、笑顔が素敵で、おまけに凄く可愛くて、しかも名前も被るなんて、そんな偶然…ありえない…。
「よろしく」
「あ、なんて呼び合おうかな…?じゃあー私のことは杏奈って呼んでよ。私は杏ちゃんって呼ぶから笑」
「あ、うん!」
「……」
沈黙…
ああ、、話終わってしまった…
私はいつもそう。
会話が続けられない。
だから、つまらないとか、話してても楽しくないって言われて嫌われてしまうんだ…。
今度こそはっ…て思ったのにな…
「杏ちゃんさ、意外と、平気だったりする?」
パッと顔をあげればさっきと変わらない表情で私を、見つめてくる杏奈ちゃん。
「あ、えっーと…」
何の事…?
「告白して、振られちゃった事」
やっぱりなんだか、見透かされてるみたい。
「あー、…あはは、、なんか、、…」
いつも言いかけて、辞めてしまうところも私の悪い癖。
「なんか、振られた事よりも、周りからの非難の方がショックだ」
え…?
「って…事?」
な、何で…私の思ったことを、、
「あはは、だから、顔に出てるって」
クスクスッと笑って私を見つめてくる。
「そ、その通りだよ…振られた事は、、なんか、一瞬過ぎて、あんまし…き、記憶がボヤッ…みたいな笑」
「そかそか、話しかけて正解だったなぁ、」
「え?」
杏奈ちゃんは顔に手を置いて顔を少し近づけてきた。
「だってさ、さっきクラスの子がコソコソ話してだ時、すっっごく落ち込んでるみたいだったから杏ちゃんが笑」
ちゃんと…見ててくれてるんだ…
「よ、よく見てるね、そんな、顔だけでわかるなんてっ…」
「私、人の表情には凄く敏感に感じとれるの、ま、……それが…きもがられたりしちゃうんだけどね…」
一瞬だけだが、微かに杏奈ちゃんの顔が歪んだ気がした。
き、気のせいかな…?
「そ、そんな事ないよ!私にとっては凄く、助かる!!」
バッと立ち上がってなぜか焦っている自分がいた。
「……ぷっ……」
杏奈ちゃんが俯いたかと思ったら肩が震えているのがわかった。
「あ、ご、ごめっ…」
「あはははは…っ!杏ちゃんっ…最高だねっ…あはっ、ほっ、本当に、やっぱ、あはっ面白いねっ!」
顔を上げて私を見つめる顔は笑いすぎて涙が出ているという状態だった。
「も、もうっ!びっくりさせないでよっ!な、泣いたかと思ったじゃん!」
な、何だ…笑いすぎて涙が出てただけか…
脱力して、椅子にガタンッと座り直した。
「あはっ…あはは、ご、ごめんごめん、ようやく慣れてきたみたいだね〜」
え?
「今やっと笑った顔見た」
…
「え、?わ、私ずっと笑ってたじゃん」
私の返答にフルフルと首を横に振りながら…。
「うんん、違う、今以外の笑顔は全部目が笑ってなかったよ?」
目、?
…え、まって、どこまで…私の事見ててくれてるわけ?
「あー引いたでしょっ、」
「いやいや!す、すごい!よく見てるね!」
こんなにも観察力がある人初めてだ…
「そう?こんなの、得意とか何でもないよ…」
また、寂しいそうな、辛そうな、そんな表情を見せた杏奈ちゃん。
「でも…杏ちゃんが、助かるって言ってくれるのなら、私にとっては、長所なのかなぁ〜…」
杏奈ちゃんは一度天井を見上げて、ゆっくりと私の方に視線を動かして微笑んだ。
「うん!凄く良い事だと思う。ある意味ちょ、超能力者だよ!笑」
「大袈裟〜笑笑ありがとう」
その時…ガラガラっと音を立て教室に入ってきたさっきの先生。
「席に着け〜」
「先生来ちゃったね…また、後で話そ!」
私の方に笑いかけ、そのまま背を向けて座り直した。
なんか………。
あっという間だな…。
10分って、こんなにも短いものなんだなぁ。
「よぉ〜〜し、みんな揃ったみたいだな。んじゃあー早速だが、まずは自己紹介から始めるか…まず今日からみんなの担任を務める事になった岩本幸樹だ。よろしくな。主に俺の専門教科は国語だ。みんなよろしく。………ま、俺の自己紹介はこの辺にしといて、1人ずつ今から自己紹介をして言ってくれ。自己紹介の内容は……1、…名前な、2、…趣味、3、どこの中学から来たか…4、あとは…そうだな…自分のアピールポイントを出来るだけ沢山言うこと。以上だ…なら、窓際から順番に…」
一方的に話を済ませると岩本先生は近くにあったパイプ椅子に腰をかけた。
それと同時に恥ずかしそうにゆっくり立ち上がる窓際の一番前の女の子。
ゆっくりと自己紹介をし始めた。
出席番号1番の子とか凄くかわいそう。
だって、こういう時必ず最初に言わなきゃいけないし、授業で当てられる時だって必ずだし…本当に…あ行の苗字じゃなくてよかった…。
だからといって油断していたらダメだ。
自己紹介なんぞすぐに回ってきてしまう。
ぼやっとしていたら、考える暇もなく順番が来てしまう。
その前に、話す内容考えとかないと。
初日からみんなからの印象は、好印象では絶対にない。
どちらかといえば変人扱いだ。
何としてでも、はっきり最後まですんなり終わらせなければ…。
えっと…名前は松岡杏菜です。
趣味は…本を読む事と、小説を書く事です。
ん?いや、ダメだ、陰キャと思われてしまう。
うーん、、、
趣味は、犬と戯れる事と、ラジオ体操です。
いやいや、これも違う。
えっと、
趣味は、映画鑑賞です。
で、いいか…
それから、丸山中学校から来ました。
あとは…あ、アピールポイント………
待って…1つも…見つからない…。
えっと…何がある…
何もなくね?
やばいどうしよう…
「次の奴〜」
先生の声が聞こえてきたが、まだ私の番ではないはずだ…
考えろ…考えろ…考えろ…
「あ、…ちゃん…………ん………ちゃん!…杏ちゃん!!」
ハッ…
バッと顔を見れば私の方を見ている杏奈ちゃん。
「自己紹介…!」
え…うそ、わ、もう私の番なの?!
早くない?!
「あ、、、ああ!ぇ、すみません!」
素早く立ち上がると、私の視線の先には沢山の人たちが冷たい眼差しをしていた。
あ、、…
終わった…やらかした…
次の更新も読んでくださいね。
よろしくお願いします。