女王様の言うとおり
そこにあったのは白線の上を渡る蟻の行列だった。


きっと、誰かが車から食べ終えたお菓子の袋を投げ捨てたのだろう。


チョコレートと書かれた袋へ向けて歩いて行くのがわかった。


「あんなところにゴミを捨てるなんて、嫌だね」


なんとなく、奏へ向けて声をかけていた。


ここで立ちどまってなにも話さないのも悪いかと思ったのだ。


奏は一瞬こちらへ視線を向け、無言で再び蟻の行列を凝視し始めた。


なんだろう、感じ悪いな……。


そう思った時だった。


一台のトラックが走って来た。


「そんなに身を乗り出してたら危ないよ?」


今にも歩道に出てしまいそうな奏に声をかける。


奏が一瞬トラックへ視線を向けた……次の瞬間だった。


奏は一歩前で踏み出し、蟻の行列へ向けて走ったのだ。


「え!?」


咄嗟のことで手を伸ばすことができなかった。


「危ない!」


柊真が叫ぶ。
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