女王様の言うとおり
悲しいせいなのか、それとも怒りが混ざっているのか、その表情からは読み取ることができなかった。


「あそこにいる全員が寄生されたってことじゃないよな?」


一番不安を感じていたことを、柊真が唸るような声で言った。


あたしは咄嗟に「そんなわけなじゃん!」と、大きな声で否定する。


大西さんに興味を示していない数人の生徒がチラリとこちらへ視線を向けるのがわかった。


「だけど、大西さんとキスをした相手は感染する。その感染者が誰かにキスをしたら、その誰かも感染するんだろ? ギャルの時がどうだったみたいに」


柊真の言葉にあたしは言葉を失ってしまった。


パンデミックという言葉が脳裏をよぎった。


いつだったか他国から入って来たウイルスが各国で流行し、パンデミックを引き起こした事例を思い出していた。


これはまさしくそれと同じパンデミックだった。


ただ舞台が学校なだけ。


感染する速度が極めて遅いだけ。


それでも、この狭い学校内で感染が拡大すれば、あたしたちは一瞬にして寄生されてしまうだろう。
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