女王様の言うとおり
柊真を見ると、恍惚とした表情を浮かべて口の端からヨダレを垂らしている。


「柊真……」


ようやく口から手が離れたのに、叫ぶことができなかった。


ただただ悲しくて、絶望で胸が押しつぶされて、柊真の名前を必死で呼ぶことしかできなかった。


「これでA組のほぼ全員があたしの味方になった。あなたはどうする?」


大西さんがあたしの目の前へ移動してきて試すように聞いて来た。


その質問にあたしは目を見開く。


A組で正常な人間はあたしひとり。


こんな中で放置されてしまうほうがずっと恐ろしかった。


それを知っていて、大西さんはわざとあたしに選択させようとしているのだ。


あたしはきつく奥歯を噛みしめて涙があふれ出すのを我慢した。


ヒナが言っていた。


仲間になった方が楽なんじゃないかって。


いまならその気持ちが痛いほどに理解できた。


このままひとりでいることを選んだら、きっと大西さんはあたしを孤独へと突き落とすことだろう。
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